先日読み終えた吉田修一さんの「パークライフ」に続けて昨日読了したのが「パレード」でした。あまりにも強烈過ぎて全く寝付けず、この気持ちを表さざるを得ない状態です(^^♪。
ひょんなことから暮らし始める5人。地方出身で気のよい大学生の良介,彼氏からの連絡をただただ待ち続ける女性の琴美,酒豪で売れないイラストを描く絵師の未来,自分の若さを切り売りしている男娼のサトル,そして彼らに頼られる映画配給会社勤務の直輝。
シェアハウスと化す2LDKのマンションでの生活は、一見”平穏無事”のように見える。其々が悩みや隠し事を持ってはいるが、時には助け合い、時にはワザと知らぬ振りをしながら、うまく暮らしていっているように見える。
ところが・・・・
解説の川上弘美氏は「怖い小説だ。」と言っている。私自身、”ぞっ”として寝付けない程と言うのは先程も書きました。
吉田修一氏の名作「
悪人」は
パークライフ・flowers・パレード・・・・を経てこのようにして生まれてきたのだなと実感しました。
さて話を元に戻して、僕はこの物語のポイントは一番最初に出てくる言葉のように思います。それは、シェアハウスと化しているマンションの4階のベランダから眼下に旧甲州街道を見下ろす風景について書かれているのですが・・・。
一日何千台と言う車が通っているにもかかわらず、一台として事故を起こす事がない風景。そんな風景ですが、ある日、いきなり事故が起こります。普通に見えるおばさんが追突事故を起こします、しかし、ほんの数分で流れは変わりながらも通常と同じように車が通い始めます。
誰しもが持ち合わせている”狂気”・”欲望”、通常は”愛”・”理性”により押さえられています。つまり車がぶつかりそうになれば、自動的にブレーキを踏む。前の車が速度を上げれば、その流れを妨げないように自分も速度を上げる。現代生活の生き方みたいなものです。
しかし、事故は必ず起こる、でも、それが偶発的な事故であれ、起こるべくして起きる事故であれ、すぐさま何事もなかったかのように痕跡を隠されてしまいます。
人間が持つ”狂気”はまさに、シェアハウスと化しているマンションの4階のベランダから眼下に旧甲州街道を見下ろす風景の車の流れに何時かは起こる”衝突事故”みたいなもので、そればかりではなく、その事故そのものを見て見ぬふりをし、何事も無かったかのように生活するシェアハウスの住人たちの心の中にも、矢張り”狂気”が存在するように描かれているように思いました。しかも痕跡も残さずに・・・・・。
それ故、「怖い小説だ。」と言わせしめているのでしょう。
1回目の読了後の私の感想。この吉田修一さんの”パレード”と言う作品は”ほっと”安心するような青春群像の物語と見せかけて、その実は、人間の持つ”狂気”と、それを見て見ぬ振りをする”狂気”を描いた怖い作品と僕は感じました。
阿野音楽教室(Jazz&pops/classical)
阿野音楽制作(楽譜浄書/移調・採譜/完全コピー・ピアノ編曲・演奏用バックデータ制作/販売)